愛媛大学白菊会の現況
愛媛大学白菊会 私が愛媛大学白菊会に献体したのは昭和55年のこと。丁度愛大解剖学担当の絹谷助教授が川之江市役所を訪れ、当時現職(川之江市長)の私が応待申しあげた。「今、献体が不足しています。市民の皆さんに呼びかけて戴きたい」の要請があった。考えてみると、市民への呼びかけ以前に、私が何をなすべきかを考えた。と云う事は先ず私がそれに答えなければならないと考えた。 早速に献体をと考えた。がそれ以前に家族の了解が必要である。と云う事は人それぞれの考えがある。かつて私は砲煙弾雨の中を潜りぬけてきた男である。もう少年時代から死生観と云うものははっきりしていた。海軍に籍を置いた者なれば、艦内での死没は当然のこと水葬であり、又人生最終は、風葬でよし、鳥葬でよし、火葬でよし、水葬でよし、何等拒むものではない。ましてや死後、医学徒への貢献とあれば人生これ以上の歓びはないのである。家族の説得の功を得て、白菊会に献体の届を済ます。献体番号は437号。 処で今、愛媛大学白菊会では2,000余の献体者がある。毎年必要な遺体は「30体」と云う事である。故に保管の事も考慮して、昨年より愛大白菊会での受入れは年間「30体」と云う事に限定せざるを得なくなった。当然現状では遺骨の返還は3年から4年以後となっている。 毎年篤志解剖全国連合会は持ち廻りで3月末頃を期して実施されている。それぞれ大学には「白菊会」らしき会があり、各大学によって需要と供給の関連がまちまちである。余る大学、不足する大学、研修会では甲論乙駁の議論がなされている。一向にまとまりのない話が延々と繰返えされている。 果して、全国レベルでこの過不足のバランスがとれないものだろうか。この辺で取りまとめの好きな文部当局が口ばしを入れてもよいと思われるが、大学当局の自治精神を慮って腰をあげそうとも思われない。 唯、愛媛大学白菊会の事のみ考えるなれば、何も心配はないのである。それでも「30体」の選に漏れた人の、ボランティアの心情を考える時、不足の大学へ廻してあげたらと、つい要らん事を考えるものである。 私はいつも總会に参加して、一向に埒のあかん話を辛抱して聞いている者の1人である。 (理事長 石津榮一)
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